
自分や親の老後の財産・
相続対策は大丈夫?

上記には、高齢者を持つ私自身も今まさに体験している事柄も含まれており、当事者としてその不安はよく理解できます。
親の財産管理や相続の対策をせずに放置しておくと、将来的に思わぬトラブルや困りごとに直面する可能性があります。例えば、認知症などで判断能力が低下した場合には、親名義の預貯金や不動産が凍結され、必要なときに資金を引き出せなかったり、売却できなかったりすることがあります。また、相続が発生した際には、遺産分割でもめるリスクが高まり、家族間の関係に深刻な影響を与えることもあります。
このような事態を予防するためには、何と言っても事前の対策が非常に重要です。対策方法としては、ここで取り上げる「家族信託」や「任意後見」「遺言書作成」などがあり、それぞれ目的や状況に応じて選ぶ必要があります。意外に知られていませんが、その中でも家族信託は、親が元気なうちから柔軟に財産管理の仕組みを整えられる方法として、注目されています。
ただし、このような対策は法的な知識や手続きが必要で、自分だけで対応するのは難しいケースもあります。専門家に相談することで、家族の状況に合った適切なプランを立てることができ、将来的な安心につながります。まずは現状をしっかりと把握、できるところから少しずつ準備を始めることが大切です。
家族信託が注目
されている理由
① 高齢化の加速と「認知症による資産凍結リスク」の現実味
日本は世界でも有数の高齢化社会となっており、65歳以上の人口割合は年々増加しています。高齢になると認知症の発症リスクも高まり、判断能力や意思決定力が低下するケースが増えています。こうした状況下で、多くの家庭が「資産凍結」や「財産管理ができなくなる」リスクに直面しており、従来の成年後見制度だけでは十分に対応できない課題が浮き彫りになっています。
特に家族や親族が本人の意思を尊重しながら柔軟に資産管理を行う必要性が高まっており、そのための新しい方法として家族信託が注目されています。
引用元:内閣府 令和2年版高齢社会白書
棒グラフと実践の高齢化率については、2015までは総務省「国勢調査」、2019年は総務省「人口推計」
2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」の推計結果より
引用元:厚生労働省. (n.d.). 認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計.
有病率は、2022年度から2023年度にかけて、厚生労働省の委託研究(研究代表者:九州大学大学院教授 二宮利治氏)として実施された調査結果に基づく。全国6カ所(福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町、島根県海士町、岩手県矢巾町、大阪府吹田市)の65歳以上の住民約8,600人を対象

うちはまだ元気だから大丈夫…と思っていたけど
② 成年後見制度への不満・限界
成年後見制度は、判断能力が不十分になった方の財産管理や生活支援を法律面から支えるための公的制度です。しかしながら、実際に利用する過程では、制度の手続きの煩雑さや開始まで時間がかかることなど、利用者やその家族から多くの不満や課題が指摘されています。特に、本人や家族の意思が十分に反映されにくいことや、柔軟な対応が難しい点が問題視されています。
具体的には、成年後見制度を利用するには家庭裁判所の申し立てが必要で、審査や後見人選任に数ヶ月から半年以上かかることも珍しくありません。また、後見人は裁判所の監督を受けるために、本人や家族の意向よりも法律的な安全性を優先した判断が求められます。そのため、本人の希望や生活状況に応じた柔軟な支援が行いにくいケースも多く、また、長期間の費用負担も家族の負担となっています。
※ 最高裁の統計では申立てから審判まで2カ月以内が約7割とされているが、実際には申立て前の準備や審判後の登記など含めると上記期間になることが多い。

引用元:厚生労働省 成年後見制度の現状
成年後見人等と本人の関係については,親族(配偶者,親,子,兄弟姉妹及びその他親族)が成年後見人等に選任されたものが 7,242件(全体の約19.7%),親族以外の第三者が選任されたものが29,522件(全体の約80.3%)となっている。

引用元:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況
上記資料は、令和5年1月から12月までの1年間における、全国の家庭裁判所の成 年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の処 理状況について、その概況を取りまとめたものを参考に作成した。

家庭裁判所が選任するので、親族の意向が通らない場合も!!
③ 柔軟な資産管理・承継ニーズの高まり
近年では、家族の形態やライフスタイルの多様化に伴って、財産の管理や承継に対するニーズも大きく変化してきています。たとえば、子どもがいない夫婦や再婚家庭、また遠方に暮らす家族など、従来の相続の制度では対応しづらいケースが増えてきました。
また、相続発生前の段階においても、親の財産を適切に管理しながら、将来的な承継を見据えておきたいという希望が高まっています。そして、①に示すように認知症高齢者は増加し、その高齢者の保有財産も増加しています。
このような変化の中で、家族信託は柔軟な設計が可能な仕組みであり、財産を守りながら想いをつないでいく手段として注目されています。

引用元:総務省
人口動態・家族のあり方等 社会構造の変化について
単独世帯を含まない親族世帯の中で見ても、核家族世帯(夫婦のみ世帯、夫婦と子世帯、ひと り親と子世帯)の占める割合は一貫して増加しており、今後も増加を続けることが見込まれてい る。

引用元:三井住友支度銀行株式会社
認知症高齢者の保有する資産推計について
日本銀行「資金循環統計」、総務省「全国家計構造調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 29 年 推計)」、厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業報告書などから、当社の調査部が独自に推計。

うちも子どもは遠方に住んでるし、私に何かあったら…資産のこと、ちゃんと伝わるのか心配で…
家族信託を利用
すべきケース
① 認知症による資産凍結を防ぎたいケース

もし、高齢の親が認知症を発症すると、銀行口座や不動産の管理が困難になります。そんな時には家族信託を活用することで、受託者が財産を管理・処分できるため、親の生活費や介護費用を確保できます。
② 不動産の共有トラブルを避けたいケース

相続により不動産が共有名義になると、管理や売却に支障をきたすことがあります。家族信託を利用することで、共有を避け、スムーズな不動産管理が可能になります。
③ 特定の相続人に財産を承継させたいケース

法定相続分にとらわれず、特定の相続人や孫に財産を承継させたい場合に、家族信託を活用することで、柔軟な資産承継が実現できます。
④ 障がいのある子どもの将来を守りたい場合

もし、障がいのある子どもがいる場合、生活を支えるため、家族信託を利用して財産を管理し、安定した生活費を提供することが可能です。信頼できる家族を受託者とすることで、安心して将来を託すことができます。
⑤ 事業承継を円滑に進めたい場合

中小企業の事業承継において、家族信託を利用することで、株式の管理や議決権の行使をスムーズに行い、後継者への事業承継を円滑に進めることができます。
家族信託を始める前に
知っておきたい注意点
① 家族信託は万能ではありません

家族信託って良い制度みたいだけど、これだけやっておけば全部安心なの?

家族信託は大変に柔軟性の高い制度ですが、対応できない財産(預貯金、年金など)や手続き(遺留分、医療・介護の意思決定)もあります。
② 受託者には大きな責任が伴います

兄弟姉妹に頼むつもりだけど、責任とか大変じゃないのかな……

受託者は信託財産を誠実に管理し、使途を守る責任を負います。不正使用は損害賠償請求の対象にもなり得ますので、大きな負担がかかることもあります。
③ 不動産がある場合は登記が必要です

実家の土地も信託したいけど、何か特別な手続きが必要なのかな?

不動産を信託するには、信託契約書をもとに「信託登記」が必要です。
④ 相続税などの税務にも配慮が必要です

節税にもなるのかな?でも税金ってややこしそう……

信託の内容によっては、贈与税や相続税が発生するケースもあります。たとえば、委託者から受益者への利益移転が「贈与」と見なされると課税されます。税理士と連携して進めることで、リスクを最小限に抑えられます。
⑤ 信託契約書は専門家に作成を依頼しましょう

契約書ってネットで入手する雛形じゃダメかな…?

信託契約書は、一語一句が法的効力を持ち、内容次第で無効になるリスクもあります。家庭状況に合わせたオーダーメイド設計が重要です。行政書士などの専門家に相談することで、確実で安心な設計が可能になります。
他の制度との比較(成年後見制度)
成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した後に、家庭裁判所が選任した「後見人」が本人の生活や財産を支援する制度のことです。
この制度には「法定後見」と「任意後見」があり、それぞれサポートを開始するタイミングや手続内容が異なります。
比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 |
---|---|---|
利用開始の時期 | 判断能力があるうちに契約 | 判断能力が低下してから申立て |
手続きの自由度 | 契約内容を自由に設計できる | 裁判所の監督あり、資産使途に制限 |
柔軟な資産管理 | 自由に管理・処分が可能 | 保守的な資産管理に限定 |
家族による運用 | 家族に受託者として任せやすい | 裁判所が選任、第三者になることも |

もしも将来、親や自身が認知症になったときに備えて、信頼できるご家族に財産管理を任せたいという場合には、家族信託はとても有効な選択肢です。
こんなケースには家族信託が向いています
- 判断能力があるうちに、家族に管理を任せておきたい
- 成年後見制度のような裁判所の関与はできるだけ避けたい
- 将来の施設入所費用などを柔軟に引き出せるようにしておきたい
- 不動産を複数人の子どもにスムーズに承継させたい
- 将来の二次相続(二代目への資産承継)も見据えた仕組みにしたい
まとめ
✅ 成年後見制度は、法的保護が強い反面、自由度が制限されがちです。
✅ 家族信託は、事前に信頼できる人を選んで、財産の管理や承継を柔軟に設計できます。
家族信託と成年後見制度のどちらが良いかは、目的やご家族の状況によってことなります。
※ お一人お一人にあって制度を取捨選択するためには、まずは専門家に相談することをお勧めします。
専門家をどう活用する?
家族信託は柔軟で非常に便利な仕組みですが、その設計や運用には専門的な知識が求められます。トラブルを未然に防ぎ、目的に合った信託を実現するためにも、専門家のサポートを受けることが大切です。

行政書士は、信託契約書の作成支援や関係者との調整など、家族信託の実務全体をサポートします。「誠実にあなたに寄り添う」がモットーですので、お気軽にご相談ください。
それぞれの専門家が得意とする分野
ここでは、家族信託の関わる専門家について、わかりやすく解説します。
それぞれの専門家の強みを活かしながら、行政書士が全体の窓口となって調整・ご提案いたします。
必要に応じて、信頼できる司法書士・税理士をご紹介可能です。
ご相談の流れ

「何から始めたら良いか分からない」
そんな方でもご安心ください。
将来の不安を整理しながら、解消するための必要な手続きを以下に一つずつご案内します。
相談のお申し込み
期間目安:
即日〜数日以内
費用:
1時間無料
- 電話・お問い合わせフォームからご予約ください
- ご家族の状況を簡単にお伺いします
- ご希望により、面談の日程を調整します

ヒアリング面談
期間目安:
1回/60〜90分
費用:
1時間5,500円税込
- 認知症への備えやご家族の不安を丁寧にお伺いします
- 家族信託が適切かどうかを一緒に検討します

信託設計とお見積りのご提示
期間目安:
1〜2週間
費用:
無料(設計案・費用内訳のご説明まで)
- 財産や家族構成を踏まえた最適な信託案をご提案します
- 今後かかる費用もわかりやすくご説明いたします

家族信託契約書の作成
期間目安:
1〜2週間
費用:
10万〜25万円税込
- 法的に有効な信託契約書を専門的に作成します
- 公証人との調整や実務の細かい部分までお任せください

契約の締結・実行支援
期間目安:
1週間程度
費用:
上記費用に含まれる場合あり
※費用について別途3万~5万円程度の場合あり
- 公証役場での手続き、金融機関への名義変更も必要に応じてサポートします。
- 信託開始後のご相談も可能です(オプション対応)
よくあるご質問

A1.不動産(自宅や賃貸物件など)、現金、株式(ただし、証券会社の対応次第)などさまざまな財産に使えます。ただし、対象外のもの(預金・年金受給権・農地など)もあるため、個別の財産については専門家の確認が必要です。
A2.原則として、契約当事者である委託者(財産を託す人)に判断能力がなければ契約は無効(2020年4月1日に施行された改正民法第3条の2)となります。認知症発症後では基本的に家族信託は利用できないため、判断能力がある元気な間の準備が重要です。
A3.法的には必須ではありませんが、将来のトラブルを防ぐために公正証書にすることが強く推奨されます。特に不動産が関係する場合は登記の関係で、また株式は金融機関の規定上、公正証書が必要になるケースが多いです。
A4.判断能力がしっかりしている元気なうちに検討・準備するのが理想です。認知症のリスクが高まる前にスタートすることで、将来の安心につながるので、できるだけ早い時期に始めることが重要です。
A5.いいえ、受託者には財産を管理・運用する権限がありますが、自由に使えるわけではありません。委託者は受益者(利益を受ける人)のために誠実に管理する義務があり、もし不正行為があれば法的責任を問われます。
A6.はい、行政書士は家族信託契約書の作成や、信託の設計サポートを行う専門職です。ご家族の事情に応じたオーダーメイドの信託内容をご提案し、法的に有効な形で書面化いたします。
A7.はい、行政書士に家族信託の設計や契約書の作成を依頼できます。ただし、信託契約後には信託登記(名義の変更)が必要で、その手続き自体は司法書士が行います。行政書士は契約内容の整理や司法書士との連携までサポートすることが可能です。
A8.はい、家族信託でカバーできない財産がある場合や、最終的に遺産分割の意向を明確にしておくためにも、家族信託と遺言と併用することをお勧めします。ちなみに、家族信託は遺言よりも優先されます。
A9.原則として、契約内容は当初の合意に基づくため、相続発生後に一方的に変更することはできません。ただし、信託契約に「変更条項」を設けておけば柔軟に対応できるケースもあります。
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事務所概要
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登録・所属 | 日本行政書士会24262766 大阪府行政書士会009073 |
プロフィール

代表者氏名
杉森 正治 Masaji Sugimori
資格
行政書士
ファイナンシャルプランナー2級
一般旅行業務取扱主任者(現 総合旅行業務取扱管理者)
経歴
1965年大阪生まれ
大阪府立市岡高等学校卒業
岡山大学理学部卒業
趣味
① 卓球(中・高校時代 卓球部所属)
現在は高校のOB会である市卓会に所属して友好を深めながら卓球を楽しんでいます。もし、卓球部OBの方、ご覧になられたら、市岡高校で定期的に練習もしているので参加されませんか。毎年11月に卓球大会と懇親会も行っています。
② プログラミング
③ 音楽(電子ピアノを購入したがまったく上達しません)
アクセス
電車でお越しの場合、大阪メトロ谷町線 野江内代駅から徒歩8分
